MEMOSHIN

カルメラのピアニスト、パクシンによる日々の出来事をパクシン目線で見たブログ

適度な酒量なんて人によって違うけどもって話

 
「酒は百薬の長と申しますが…」
 
 
先日、人生で初めて寄席に行ってきました。ずっと興味はあったけど、中々足を運べずにいた中、「昭和元禄落語心中」という漫画を見たら無性に生で落語が見たくなって、行ってまいりました。
 
 
行った時間は少し遅めでしたけれど、それでも充分に楽しめました。自分が江戸の”粋”の文化を生で楽しんでるってだけでちょっとワクワクするんですよね。空間って大事だなと改めて実感。
 
この日トリで高座に上がったのは「柳亭左龍」さんという方で、そこでお噺になったのが冒頭の言葉で始まった「試し酒」という落語でした。話のスジはご興味ある方は調べて下さい。すごく引き込まれたし、最後には大笑いしてました。いや〜なんかハマっちゃいそう。また見たいです。
 
そんなホクホクした気持ちで夜を過ごした土曜日。明けて日曜日の昨日はORESKABANDの自主企画イベントを観に渋谷Club Asiaに行って来ました。素晴らしいイベントで素晴らしいライブだったので、この土日は良いものばかり見れたなぁと思いながら電車に揺られていると、大学生(たぶん)3人が騒がしく入って来ました。
 
真ん中に一人泥酔している子がいて、その子の両側を他の二人が支えて転げないようにしていたのですが、たまたま空いていた僕の隣の席にその泥酔している子をドカンと座らせました。
 
「え。めっちゃ乱暴やん。しかもこんな泥酔してる子を周りの人(オレ)のこと考えずに、、」
 
って思ってたら、その子の友人の一人が何も言わずに消えて行きました。
 
「喧嘩でもしてるんかな。まぁあんだけ酔ってたら喧嘩しててもほっとかれへんしな〜」
 
て思ってたら、泥酔してる子が起き出して、残った一人の友達に向かってなんかワーワー喋りはじめました。
 
 
 
「名前なんていうんすかぁ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
知り合いじゃなかった!!!
 
 
うわ、知り合いじゃなかったパターンかぁ。この子が知り合いじゃないってことはさっきの子もそうなんか。じゃぁどっか行ったのも納得。てか逆に超優しいよね。でも知らないのにまだこうやって介抱してる子はもっと優しいよね。良い人やなぁ。
 
騒がしいのは嫌なんで席を移ろうと思ってたんですけど、何だか会話がおもしろそうだから残って聞くことにしました。
 
 
「いや、ほんと名前なんていうんすかぁ」
 
「川島です」
 
「川島さん!ほんとすみませんほんとすみません。」  
  
「良いですよ」
 
「川島さんほんと良い人。川島さん川島さん。絶対に忘れない!川島さん川島さん川島さん。今度絶対に奢りますから!!!」
 
「良いですよ、そんなの。家どこなんですか?駅はどこで降りるの?」
 
「いや、僕のことなんてもうほっといていいんで!!気にしないでください」
 
「いやいや良いですよ」
 
「川島さん川島さん川島さんめっちゃ良い人。川島さん川島さん川島さん。あっ僕の携帯使って勝手にLINEとか見ていいんで僕にメッセージ送ってください。」     
 
「あっはい。。」
 
「ほんと涙出てくる、、こんな良い人いるなんて。川島さん川島さん川島さん。あっ俺携帯どこやったけ。」
 
「あっ僕が持ってますよ」
 
「えー!!拾っててくれたんですか。神!マジ超神!!川島さん川島さん。絶対に忘れない。川島さん川島さん川島さん」
 
 
 
こんなんずるいわwwww
もう隣で笑い堪えるの必死。自分で携帯渡しといて「拾っててくれたんですか!」って。酔っ払いってほんと凄いね。酒は人を狂わせるなぁ。
 
そこから今までみたいなやりとりがしばらく続くんですが、事あるごとに酔っ払いくんは「川島さん川島さん川島さん絶対に忘れない。川島さん川島さん川島さん」と呟いて、必死に恩人の名前を忘れまいとするんです。それがなんかちょっと可愛く思えて来て。
ただ、時間が経つと様子がちょっと変わって来ました。
 
 
 
「川島さん川島さん川島さん。川島さん!絶対覚えない!」
 
 
 
……………
 
……
 
 
 
 
「え?」
 
 
 
いや、そらそうやわな!川島くん「え?」ってなるわな!!俺も思わず一緒に「え?」って声出そうやったもん。
でも酔っ払いの青年は自分が逆のことを言ったのに気づいたのか、訂正します。
 
 
 
 
 
「いや、違う!絶対覚えない!!」
 
 
 
 
もうやばいwwwww
今すぐお腹から声出して笑いたい。。ていうか親切で介抱してあげた酔っ払いに「絶対に名前覚えない!」って謎の宣言されるって、、川島くん不憫すぎwwww
 
そこからは頭の中で逆の言葉がもう定着されてしまったのか酔っ払い青年は
 
「川島さん川島さん川島さん。絶対に覚えない。川島さん川島さん」
 
ってブツブツと呟き続けてました。
そんな中でも彼を見捨てずに見守り続ける川島くん。あんたは漢だ!なんて良いやつ。そんな良いやつに対してこの酔っ払いは
 
「俺大丈夫なんでほんと置いてってください。もう大丈夫なんで」
 
ってフラフラしながら言うんですよ。どこが大丈夫やねんと。そして川島くんも、そんな彼を見捨てずにちゃんと側に居続けるんですよね。すると酔っ払い青年はいきなりこう言いだしたんです。
 
 
 
「川島さん。俺、トイレ行きたいっす。。」
 
 
 
いやいや、お前さっきまで放っとけって言ってたやんけ。しかもトイレって。。
 
 
「お願いします。お願いします!川島さん!もう限界なんです。トイレ行きたい。。」
 
 
呆れて物も言えぬ顔があるとしたら、僕はその表情をしていたでしょう。そして多分、川島くんも。
 
でも川島くんは優しいから「じゃぁ次の駅で行きましょうね」と、本当に次の駅でフラフラな彼の肩を支えながら電車を降りて行きました。
 
何やったんやこれ。。。。
 
めっちゃおもろかった。。。
 
ちょっと呆然としてると、彼らがいなくなった電車の中がちょっと湧いていました。
 
「え?何今の?超面白くなかった??」
 
みたいな感じで。ざわざわとクスクスで満たされた車内。
 
 
 
これ、あれや。俺知ってる。この空気感。あれや、、、
 
 
 
 
 
 
寄席や。
 
 
 
 
先ほどの二人が見せたのはオチはないものの、まさに落語みたい。酔っ払いがいかにもな馬鹿らしい酔っ払いで、介抱してあげてる人も嫌嫌ながらも人情味がある人で。この15分ぐらいの間でちょっとした面白おかしい人間ドラマを展開してた。そして何より、注目して聞いてたん俺だけじゃなかった。みんな楽しんでたみたい。まさにコンテンポラリーなリアルライブ落語劇。
 
 
あ〜何かええもん見させてもらったわ〜。でもやっぱり気になるのは酔っ払った青年が川島くんのことを覚えてるのかどうか。最後の方には「絶対覚えない!」って宣言してたけど。でも何かこの話は後日談にこそオチがついてそうな気配がプンプンするのですごく気になります。まぁ多分この人たちに出会うことはもうないんでしょうけどね。
 
 
"酒は百薬の長”とは言いますけど"万病の元”という言葉もあります。適度な酒の量なんて人によって違うとは言え、やっぱり大事なことは「酒は飲んでも飲まれるな」ということ。この教訓を今一度実演とともに教えてもらった気がするので、今度もし彼らに出会うことがあればお礼をしたいと思います。何が良いかな。そうですね。。
 
 
 
 
お礼にお酒でも一杯、ご馳走したいと思います。
 
 
 
 
以上、パクシンでした。次は水曜日!